「安心して非競争領域を任せられる」Web3事業のパートナーとしてGincoと連携するSBIグループの取組みとは

株式会社Ginco

「安心して非競争領域を任せられる」Web3事業のパートナーとしてGincoと連携するSBIグループの取組みとは
インタビュー協力:
SBIリクイディティマーケット株式会社/SBI VCトレード株式会社
業界:
金融
プロジェクト内容:
外国為替証拠金取引コンファメーションシステム「BCPostTrade」/日本円でNFTを直接買える「SBI Web3 Wallet」
導入サービス:
プロフェッショナルサービス/Web3 Cloud/Web3 SaaS(Ginco Enterprise Wallet)

国内でも有数の金融コングロマリットを形成しているSBIグループ。Gincoは同グループと関係構築を進めて、ブロックチェーンを用いた業務改善や新サービスの立ち上げなど幅広い形でご支援しています。

GincoはSBIグループにどのような価値をもたらしたのか。同グループで外国為替事業・暗号資産関連事業を営むSBIリクイディティ・マーケット専務取締役の増田 浩之氏とSBI VCトレード 常務取締役の近藤 智彦氏に聞きました。(インタビュー実施日:2022年11月)

本記事で分かること

  • SBIグループのWeb3関連事業においてGincoが解決した課題
  • Gincoのソリューションを導入したことによる具体的な効果
  • Gincoの強みとケイパビリティ


インタビュー協力


増田 浩之さま(写真左)
SBIリクイディティ・マーケット株式会社 専務取締役
SBI VCトレード株式会社 執行役員

2008年にSBIリクイディティ・マーケットの設立メンバーとして参画し、ディーリング・システム・業務の管掌を歴任。為替証拠金取引の流動性・システム提供に20年以上携わる。ビジネスインフラ構築、新規プロダクト組成、システム上流をメインフィールドとし、SBI FXトレード(金融商品取引業)、SBIクリアリング信託(運用型信託業)の設立に携わり、SBI VCトレードでは2018年から業務設計・法令改正対応に参画。

近藤 智彦さま(写真右)
SBI VCトレード株式会社 常務取締役
SBIリクイディティ・マーケット株式会社 取締役

2007年SBIホールディングスに新卒入社、 SBIグループの情報システムを担当。その後、同グループの電子決済事業を経て、 外国為替関連事業を営むSBIリクイディティ・ マーケットにおいてシステム担当役員を務める。2019年SBI VCトレード取締役就任以降、暗号資産・ Web3関連事業を中心に従事し現職。 SBI大学院大学経営管理研究科を2016年修了。

ブロックチェーン活用の技術支援でFX取引向けシステムの運用に貢献

――SBIグループとGincoの取引は、SBIリクイディティ・マーケットで活用しているブロックチェーンの技術支援がスタートでしたね。

増田さま(以下、敬称略) そうですね。SBIリクイディティ・マーケットは、取引業者さま向けに外国為替証拠金取引(FX取引)システムとプライシングを提供すると同時に30銀行を超えるインターバンクからの流動性を確保し、取引業者さまが円滑にトレードできるようサービスを提供しています。

 FX取引では、1日の取引結果とそれに伴っていくら受払いが発生するか、毎日取引業者さまと確認を行っています。以前はこの作業をメールで行っていました。

ブロックチェーンの特性である改ざんが困難、証跡保全、必要なメンバー間でのデータ共有等の利点を活用し、この確認作業をシームレスかつ安全にできないかと考えて開発したのが、外国為替証拠金取引コンファメーションシステム「BCPostTrade※1」です。
※1:外国為替取引コンファメーションシステム「BCPostTrade」とは

このシステム開発にGincoが加わり、従来よりも円滑な運用が実現したことが全てのきっかけです。

近藤さま(以下、敬称略) SBIリクイディティ・マーケットの成功を踏まえて、今度は暗号資産交換業であるSBI VCトレードでも活用ができないか検討することになりました。「BCPostTrade」について相談をし始めた段階から、Gincoのブロックチェーンに対する知見や技術力を実感しており、提供インフラが信頼に値すると考えたからです。

Gincoに相談する以前はグループ内の開発会社や海外のベンダーにブロックチェーンの開発や維持管理などを依頼しており、そこでのコストや開発スピードがネックとなっていました。この課題を解決するため、増田を通じてGincoに問い合わせを致しました。

モニタリングサービスとウォレットを導入し業務の効率化と通貨対応数の拡大を実現

――SBI VCトレードでの導入経緯やソリューション内容について教えて下さい。

増田 Gincoは国内のブロックチェーン開発会社の中でも最も成長する企業だと見込んでいたので、SBI VCトレードが抱える課題も解決できるのではないかと期待していました。

SBI VCトレードは、法令に基づいた暗号資産の安全管理が求められ、暗号資産移転結果とブロックチェーンとの照合を日々実施する必要があります。しかし、管理しなければならないブロックチェーンが複数あり、さらにこれをチェーンごとに照合するのは大きな労力がかかっていました。

そこでまず、複数あるブロックチェーンの管理と照合を一元管理するためにGincoからモニタリングソリューションを導入しました。

近藤 実際にモニタリングソリューションを活用してみたところ、想定通りの効果を得られました。そこで、今度は業務用・顧客入出庫用ウォレットの導入を進めることにしました。

暗号資産取引所において、取り扱う暗号資産の種類の多さはサービスレベルの大きな要素の1つになっております。Gincoのソリューションを活用すれば、新たな暗号資産の追加もスピーディーかつ計画に沿って進められるのではないかと考えたからです。

実際この導入も想定通りに進み、2022年11月30日よりカルダノ(ADA)、ポリゴン(MATIC)の顧客入出庫対応を開始しましたが、Gincoのソリューションがあったからこそ実現できました。

法令と実務を知り抜いたウォレットの専門家から手厚いサポートが受けられる

――今までのGincoとのお取引で、印象に残ったポイントはありますか。

増田 私は最初にコールドウォレットを見たときが印象に残っていますね。法令を知り抜いて完全準拠しているだけでなく、暗号資産交換業の業務についても理解があることが伝わってきて、それはもう感動すら覚えました。おそらく、当局とも相当やり取りをされたのでしょうね。

また暗号資産に対する調査能力や深い知見、さらに新たな暗号資産の追加スピードも目を見張るものがあります。現在、SBI VCトレードではウォレットをGincoのソリューションで一本化するよう進めています。

近藤 私はサポートのスピードが印象に残っています。SBI VCトレードは海外のベンダーとも取引がありますが、問い合わせしてから回答が返ってくるまで時差や言語、サービスレベルの違いもあり時間を要しておりました。

その点、国内ベンダーのGincoとのやり取りは非常にスムーズですし安心感もあります。

インフラ全般の負担が激減し競争領域へリソースを集中投下

――Gincoのサービスを導入した効果について教えて下さい。

増田 まずウォレットを維持・管理するコストが大幅に削減されました。ウォレットや各種インフラ開発・維持管理を外部のベンダーやグループ内のベンダーに依頼していた頃に比べ、この大部分がスリム化されています。

近藤 事業戦略上でも効果を実感します。例えば、海外のベンダーだと、取り扱う暗号資産の種類を増やす際に開発などに莫大な時間を要してしまい、最悪の場合取り扱い開始のスケジュールすら立てられません。しかし、Gincoならこの課題も解決してくれます。

増田 暗号資産交換業には、競争領域と非競争領域があると考えています。Gincoのおかげでウォレットの管理など非競争領域の効率化を実現でき、暗号資産交換業が本来注力すべき顧客獲得や暗号資産取引所のサービス向上など、競争領域の取り組みに専念できるようになりました。

純粋なコスト削減効果だけでも導入の価値を感じますが、それ以上に競争領域における事業成長戦略の立案と実現を可能にする点での価値は計り知れません。

新サービスでもGincoのソリューションを活用。協業はこれからも続く

――今後、Gincoのソリューションを活用する新たな取り組みはありますか。

近藤 2023年1月にローンチ予定の「SBI Web3ウォレット」でGincoのソリューションを活用します。

ご存知の通り、2021年ごろから「NFT」や「Web3」がホットワードになり始めた一方で、どれだけの人がNFTを手にしたかといえば、一部のアーリーアダプターに限られているのが実情です。MetaMaskなどを使用する現在の方法は、一般の方々にとってNFTを入手すること自体ハードルが高く、広く一般の方々にサービスをご利用いただくことは困難であると考えております。そこで、NFTをもっと手軽に手に入れることができる仕組みを作ろうとSBI Web3ウォレットを提供することに決めました。

SBIグループでは2021年にNFTマーケットプレイス『nanakusa』を運営する株式会社スマートアプリ(現、SBI NFT株式会社)のM&Aを行い、NFT事業に本格的に参入致しました。これにより、暗号資産取引所でイーサリアムなどを入手してマーケットプレイスでNFTを購入するといったフローをグループ内一気通貫で提供することが可能になりました。

このフローのUXをより強化し、マスアダプションを加速させるためのサービスがSBI Web3ウォレットです。

SBI Web3ウォレットでは、日本円で直接NFTを購入できるようになります。日本円から暗号資産の交換を自動化して、よりシームレスにNFTを購入できるようにすることで、NFTを誰もが当たり前に入手し利用できるようにしていきます。

増田 「顧客中心主義」を掲げるSBIグループとして、Gincoとインフラを整備して、NFT利用促進を進めるインフラを提供できるのは大きなことです。2020年ごろは、NFTは利用者から見てもまだ遠い存在のように感じましたが、Gincoのおかげでお客さまだけでなく、私たちにとっても身近な存在になりました。

――これからGincoに期待することは何ですか。

近藤 変化が激しいブロックチェーンやWeb3の業界で常に最先端を追い、それを私たちに還元していただけることを期待しております。これからもスピード感を持って対応していただけると助かりますね。

先ほどもお伝えした通り、暗号資産取引所は取り扱う暗号資産の種類がポイントであり、例えば海外では1,000種類という単位で取り扱っている取引所もある中、SBI VCトレードの銘柄追加においてウォレットがネックとならないよう、Gincoにはさらに力を貸していただきたいですね。

増田 暗号資産交換業において、法令改正への対応は欠かすことができません。レギュレーションへの対応もスピーディーに行ったうえ、且つ新しい法整備から生まれる新しいビジネスをスピーディーに事業化できるよう、SBI VCトレードとGincoが協力して取り組めれば嬉しいですね。

本事例のポイント

  • BCPostTradeのプロジェクト参画をきっかけに、Web3領域の事業展開を並走するパートナーとしてGincoとの連携を強化してきた。
  • Gincoが参加したことで技術開発のスピード向上とコスト構造のスリム化を実現。
  • 競争領域の取り組みに専念できるようになり、事業戦略の実現性が大幅に向上した。

参考